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■荒川の活動と課題について・第一回■
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写真:皆が楽しみながら環境まちづくりを

第一回

面的、流域的環境まちづくりの実施について

古民家などの拠点活用で環境保全活動を展開


特定非営利活動法人まちづくり楽会理事
     山本 正史







点的活動のごみ拾い

 2000年頃から環境保全の質が問われるようになってきた。それは、環境関係の国際会議・宣言が活発に開催・発表され、その内容が報道されるようになり、再生・回復が真剣に検討されるようになってきたこと、また集中豪雨、温暖化、産廃ゴミ・生活ゴミの増大が自分の廻りに発生し、否応がなく、対応をせざるを得なくなってきたことによるものと考えられる。
 その変化は、それまでの河川が汚くなったよね、大気が汚れているよね、というこれまでの動きに増進し、その汚れ、気象の変化を引き起こしているのが自分たち自身であると言うことが顕著に理解されてきたためである。


2000年までは点的活動が主流


 環境関係の市民活動は、主として1980年代からゴルフ場・リゾート施設の建設、ダムの建設、里山の崩壊などを起こしていた、行政・企業への反対運動からスタートしたが、その後河川法などの改正で環境に配慮しなければならなくなった施策の変化に応じ、点的線的活動に移行していった。つまり、里山・谷津田・棚田保全、水辺活動の活発化が盛んになっていった。また、自然体験活動の事業も活発化してきて、それらの活動はより本格化、日常的になりつつある。いずれも点的活動であるが、自然体験活動では、下流の人間、生徒が上流、源流体験をすることで、線的活動を開始したり、ゴミ拾いでは流域のあちこちで実施することで、「河川つながり」で環境保全活動を行うと言う線的活動をするにいたった。

 行政と市民団体(NPO法人など)の協働化も模索しながら進行中である。

 しかし、これらは環境保全活動の第1幕である。

 市民団体という一部の人たちが環境保全活動をなすのではなく、この活動の最終的目標は、水循環の保全、もの循環の保全であるが、その身近な目標として、「住み良いまちづくり」がある。

 健常者(未障害者)、障害者にも住み良いまちづくりであり、田んぼ、畑、里山、源流林の美しい光景は、東アジア、日本の根本思想である。農本主義は一時誤って使われたが、環境保全活動の主流をなす思想とも言える。

 このためには、市町村単位で見れば面的環境保全活動、流域単位で見れば、流域の水循環保全活動などが今後の活動の目標とされなければならない。

自治会町内会が活動する環境保全活動へ



 東松山環境パートナー会議の代表、高松治氏によれば、第2幕は、自治体町内会も参加する環境保全活動が今後重要であるとしている。そして第3幕は、住民一人一人が環境活動に日常的に参加している状態としている。

 第3幕はともかくとして、自治会町内会が日常的、恒常的に活動する活動とは何か、これは前述した「住み良いまちづくり」であり、現在日本でその活発化が指摘されているNPO活動の総体がそれにあたるであろう。

 では具体的には何か言うと、多くをここで述べることはできないが、一つは生ゴミの資源化など顕著な例であろう。生ゴミを資源として考え、堆肥化を図る。しかしその堆肥化はその堆肥を何に使うか、生ゴミを集めるにはどうしたら良いかなどの問題が存在する。
その解決の一端が市民農園の活発化である。


まちづくり楽会が市民農園を開設、協力して生ゴミの資源化も

 当まちづくり楽会では、2005年1月より市民農園を開設し、さらに東松山市の「ごみ対策委員会」から生まれた「東松山市民生ゴミ資源化研究会」と連携し、生ゴミをその市民農園に活用していく計画である。

 また、中小河川、用水路(排水路)を汚すものは、主として生活排水であるが、これは徐々にであるが改善傾向にある。一番ネックなのは、食堂などが流すてんぷら油などであり、クリーニング屋が流す合成洗剤であり、中小養豚場などのし尿未処理問題などである。今後廃油のリサイクルも机上に計画していく必要がある。クリーニング屋やし尿問題は未だ残るが、その処理施設は大型施設には規制があり、未処理には改善が義務化されているが、中小施設にはその経営規模から強制改善は難しく、かといって市町村の補助のみでは、個人商店と言うべくレベルに過剰負担と言うことがあり、そのリサイクル、環境保全は今後と言うことが言える。

 さて、面的流域的環境保全活動であるが、その活動は自治会町内会レベルでの活動が必要と述べたが、そうなっていくには、それなりの整備が必要となる。住民が憩える施設、集まれる施設である。当東松山市でも公民館、コミュニティ会館、地区館など多くの施設が整備されているが、その使用目的から、日常的に「憩える」「集まり雑談ができる」「泊まり込みで話し合える」「子どもが学校帰りに遊べる」と言う施設ではない。



古民家で憩う人々
なぜ古民家が大切か、環境保全活動の拠点に

 自治会町内会が日常的に環境保全活動に、とは言っても、早急には困難である。しかし、日常的に集まれたり、活躍できる場があれば、可能となる。その良い例が「桶川べに花ふるさと館」である。60人近くの高齢者が作業をしている。また小川町の「吉田家住宅」、都幾川村の「岩田家住宅」(そばやとして活用)なども規模、形態の違いはあれ、当地の野菜や梅干し、きのこ、だんごを売ったりと活用している。

 環境保全活動は、常に楽しみがなければならない。他人が捨てたごみを拾うのに、「はい、ご苦労様でした。解散」では一年に二〜三回なら我慢できるが、毎月では愚痴もでてくると言うものである。事業終了後に、だんごの一本をお茶をのみながら、囲炉裏の火で食べるのも絵になるというものである。

 まちづくり楽会では、提携市民団体と協力お手伝いしながら、2003年度から1泊2日の親子体験型自然学習ツーリングを12回実施してきた。また日帰り、荒川源流の大滝ツーリングなども実施してきて、これらのツーリングが親にとっても子どもにとってもどんなに大切かと言うことが判明してきた。また、この都幾川比企丘陵はその景色、清流が素晴らしくさらに東京にも近く、いかに自然体験ツーリングに適しているかが分かってきた。一番分かっていないのは毎日その景色に接している我々地元住民である。

 2年間は、宿泊施設、集合場所、プログラム、安全対策、指導者、フィールド、天候、移動施設、スタッフの養成など試行錯誤で実施してきて、ようやく体制が整備されてきたという感があります。

 都幾川比企丘陵エコツーリングの拠点として、ウオーキングの街として、またかつて盛んであった「お蚕(かいこ)の里」としても、この古民家を、唐子地区を始めに東松山全域に広げ、街おこしの起爆剤として活用する時代にきていると言える。そして市民農園、生ゴミの資源化などと連動し、その面的活動に実質的に拡大できればと考えています。



荒川・玉淀湖(寄居町)でカヌー体験
流域的活動について

 ここでは、荒川流域の主な流域的活動について述べてみましょう。NPO法人秩父の環境を考える会では、武甲山の緑を増やす(植林)運動や、シカや猿の木を食べる食害をどう防いでいけるかなどの活動を始めています。

 また、東京のNPO法人荒川クリーンエイド・フォーラムでは、春、秋に一斉にごみ拾いや水質調査を実施すると共に、源流体験やエコツーリングを実施し、間伐体験などで荒川上流と下流の交流を図っております。また、秋のごみ拾いは1万人近くが参加し、上流ではこれまで熊谷市が2千人で荒川河原でごみ拾いをしていました。04年度からは、まちづくり楽会や鶴ヶ島の市民団体が参加、05年度は上記の秩父の市民団体やその他の市民団体も参加する予定で次第に下流から上流へと展開してきています。

 この上中下流交流では、2000年度から「荒川水循環シンポジウム」を開催しており、ようやくこの自然体験ツーリングを実施している指導者、フィールドが荒川流域で見えてきたことにより、都幾川比企丘陵と同じく今後本格化していく計画です。

 寄居のNPO法人むさしの里山研究会では、市民団体が管理する「トンボ公園」で有名になりました。むさしの里山研究会に発展し、さらにトンボ公園という線的活動から谷津田保全、ビオトープ活動を通じて、面的活動を実施しています。これらの市民活動は、その運営の維持、専従職員の確保など困難な面も多々ありますが、古民家などの拠点が確保されれば、事業が展開しやすくなります。

 この古民家の整備を通じて、全県的、全国的にも東松山を環境先進地区として情報発信していければと考えています。


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