ふるさと唐子 心をつなぐ祈り、まつり
あかね会出版編集委員会
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このページはまつやま書房刊行の「ふるさと唐子 心をつなぐ祈り、まつり」の試読用のページとなっています。
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 また文章は発刊当時の文章を掲載しています。よって現在と多少異なる箇所がありますので、ご了承下さい。

本書の目次*青文字の表題を“ちょっと見!”できます。 
まえがき

からこの神さま

 はじめに
 地図で見る唐子の神社
 神さまと唐子の人々
唐子各地区の神社
 (1)唐子神社
 (2)葛袋神社
 (3)神戸神社
 (4)白山神社
 (5)八幡神社
 (6)氷川神社
 神社の1年
 (1)1年の祭事
 (2)正月
 (3)春まつり
 (4)夏まつり
 (5)秋まつり
 神社のお供え
 神さまにまつわるエピソード
 (1)してはいけないこと
 (2)雨ごい
 (3)いろいろな講
 (4)たたりはこわい
 (5)ご利益の実態
 (6)戦没者の慰霊
 (7)用番草が生える
    (神社を支える人々)
 唐子の信仰いろいろ
 おわりに
       
唐子の獅子舞 
     ―ふるさとの祭りと獅子舞―


 はじめに
 獅子舞あれこれ
 唐子の獅子舞を訪ねて
 (1)下唐子諏訪神社
 (2)上唐子氷川神社
 (3)神戸神社
 唐子3地区の獅子舞
 (1)神戸の獅子舞
  @神戸獅子舞の由来と歴史
  A神戸獅子舞の獅子頭
  B太鼓と装束
  C獅子舞の流れ
  D神戸獅子舞の笛と歌
  E獅子舞の思い出エピソード
 (2)下唐子の獅子舞
  @下唐子獅子舞の由来と歴史
  A下唐子獅子舞の獅子頭
  B太鼓と装束
  C獅子舞の流れ
  D下唐子獅子舞の笛と歌
  E獅子舞の思い出、エピソード
 (3)上唐子の獅子舞
  @上唐子獅子舞の由来と歴史
  A上唐子獅子舞の獅子頭
  B太鼓と装束
  C獅子舞の流れ
  D上唐子獅子舞の笛と歌
  E獅子舞の思い出、エピソード
 おわりに
唐子の講

 はじめに
 講って何?
 唐子の講の足跡を訪ねて
 唐子の講マップ
 (1)青鳥の念仏講中供養塔
 (2)青鳥の松浦家敷地内三峯様
 (3)青鳥天神社
 (4)石橋八幡神社の
    伊勢講参宮記念おとうろう
 (5)石橋八幡神社の
    伊勢講参宮記念こま犬
 (6)石橋の阿夫利神社御神燈
 (7)葛袋川北阿夫利神社の
      おとうろう
 (8)葛袋の川北公会堂前石碑群
 (9)葛袋山根の雨降山おとうろう
 (10)葛袋大平の雨降山おとうろう
 (11)下唐子神社の阿夫利神社御神燈
 (12)下唐子神社の
      伊勢講参宮記念石碑
 (13)上唐子浄空院近くの馬頭観音
 (14)上唐子氷川神社の
      登山記念(富士講)
 (15)その他
   『石佛』にみえる唐子の講
 いろいろな講
  聞き取りとアンケートから
 (1)念仏講
 (2)天神講
 (3)大山講
 (4)御獄講
 (5)榛名講
 (6)観音講
 (7)伊勢講
 (8)三峰講
 (9)釜伏講
 (10)稲荷講、巳の晩講、
    呑龍講、こんぴら講
 (11)薬師講、戸隠講、
    宝登山講
 (12)その他アンケートより
 唐子の暮らしと講の役目
 消えた講、続く講、これからの講
 おわりに

唐子のお寺
   ―死をみつめ、生をみつめて―

 
はじめに
唐子のお寺を訪ねて
 (1)唐子のお寺マップ
 (2)5つのお寺見聞記
  @青鳥山妙昌寺
  A澤田山長慶寺
  B太高山本通寺浄空院
  C八正山薬王院定宗寺
  D萬蔵寺
 (3)お寺と人々の暮らし
  @定宗寺の写経
  A浄空禅院の1年
  B妙昌寺の1年
  C長慶寺のお話
 おわりに

あとがき
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 まえがき

 私たち「あかね会」のメンバーは、埼玉県東松山市の市立唐子小学校に子どもたちがお世話になったご縁で結ばれ、20年以上もの長い間、地域の暮らしを見つめる学習を続けてまいりました。昭和50年代の唐子小学校PTAには成人教育部に「読書部」というユニークなグループがあり、親子読書など読書活動を行っておりましたが、昭和55年から絵本づくりを取り入れて、大きく変化しつつあった地域の自然や文化、生活の知恵を掘り起こし、子どもたちに伝えようと、フィールド調査をしたり、聞き取りやアンケートを行ったりして、毎年1冊ずつ絵本を作成してまいりました。そしてそれらを『ふるさと唐子のくらしと遊び』(平成3年)、『ふるさと唐子くらしの知恵とこころ』(平成4年)という単行本にまとめてまつやま書房より出版し、PTA活動の成果として一定の評価を受けることができたと思っています。
 現在、唐子小学校PTAに読書部はありませんが、OB、OGでつくったのが「あかね会」です。絵本づくりはあかね会の毎年の事業としてずっと引き継がれ、単行本に収められたもの以降昨年までに、次の9冊が発行されました。
 「からこの神さま」(平成5年)、「唐子の獅子舞」(平成6年)、「唐子の講」(平成7年)、「唐子のお寺」(平成8年)、「都幾川の流れ」(平成9年)、「唐子の養蚕」(平成10年)、「唐子の道」(平成11年)、「『天の園』とわたし」(平成12年)、「『天の園』とあかね会」(平成13年)。

 このなかから「からこの神さま」「唐子の獅子舞」「唐子の講」「唐子のお寺」の4冊をまとめて、この度『ふるさと唐子 心をつなぐ祈り、まつり』として出版することになりました。出版を決意したのは、資料の散逸を防ぐためであり、私たちの活動を多くの方々に知っていただくためであり、そして何よりも唐子の暮らし、この地で生きてきた人々の知恵や工夫を紹介したいと思ったからです。
 ここで取り上げた神社・獅子舞・講・寺などは、地域の人々の心の寄りどころとなり、人と人とを結びつける役割を果たしてきました。日常の厳しい労働と、けっして豊かではない生活、さまざまな苦しみや悲しみを抱えつつも、神仏に祈願し、互いに助け合い、そして、楽しみを共有して、それを子どもたちに伝えていく、村の生活はそうした「祈り・信仰」を中心に組織され、成り立っていたものではないかと思うのです。今日、素朴な信仰心は薄れ、結のしくみもほとんど消滅しています。新しい楽しみ方も次々に生まれて、子どもたちに対する地域や家庭の教育力も低下しているといわれます。
 昔ながらの生活がすべてよいというわけではありませんが、長い年月をかけて営々と築き上げた生きる力、暮らしの知恵や技を捨て去るのも惜しまれてなりません。身近な暮らしや歴史から学びつつ、それを日々の生活に生かしていきたいと、少しずつ勉強していくなかで、このような冊子をつくり続けてまいりました。
 このささやかな冊子から私たちの思いを汲み取っていただければこれ以上の喜びはありません。どうぞ、唐子の神社やお寺、道端の石碑、獅子舞奉納の場所などをおたずねください。きっと先人たちの心が見えてくるものと思います。
                        2002年8月10日
                            あかね会代表 石川尚子





からこの神さま

 (2)正月

 新しい年を迎える準備は、11月から始まります。葛袋神社では、11月20日大麻の頒布といって、伊勢の皇大神宮のお札が神主さんから各家庭に配布されます。12月の中旬には釜しめが行われ、各家庭の大神宮様・お釜様・氏神様・恵比寿様・稲荷様・年神様などの幣束を新しくします。

 神戸神社の釜しめ様は、12月25日(最近はその日に近い日曜日)本年の諸事悪事を払い、各家庭では新年を迎える新しいお札を神社にいただきに行きます。ぶくの家(ぶくとは、近親者の死亡後まだ日が経っていない事、通常49日くらい)では、ぶくぬき迄の間、近所にお願いしてお札を預かってもらいます。
 各家庭では「一夜餅」「九の日の餅」をさけて、28日か30日に餅つきをします。

 白山神社では、30日に掃除と門松立て、31日の晩に破魔矢を渡す程度で夜は早く引き上げます。氷川神社では、各家が9の日に正月の準備をしないので、29日に神社の掃除、しめ飾りつくり、お焚き上げ(古いお札をくべて燃やす)の穴ほりなどをします。
 31日の夜各家では家のなかで幣束を振り、今年たまった悪い事を追い出してから、路の辻(角)に幣束を立てて新年を迎えます。
 年が明けると、初詣の参拝者が続々とやってきますから、甘酒やみかんなどを振舞い、焚火にあたって新年の挨拶を交わしあったあと、それぞれの神社のしきたりに従って、神主さんを迎え、新年の儀式が行われます。

 各神社の元旦祭(歳旦祭)

○葛袋神社
 門松と旗は神社役員が1日の朝早く立て、午前8時から、神主さん、氏子全員で祭典が行われます。祈祷・玉ぐしのあとの直会はお神酒をみなでいただき、手じめ、仲間入り紹介が行われます。
 各家庭では、正月飾り・門松・しめ飾りをし、三が日お炊き上げをします。お炊き上げとは、朝は雑煮、夜はご飯を男の人がお供えする事をいいます。
 
○神戸神社
 除夜の鐘を聞いてから一般の参拝者が初詣しますので、用番は31日の午後10時頃より、焚火を燃やし甘酒をつくって接待します。
 参拝者は神主さんが持参した「破魔矢」や「御札」をいただいたり、甘酒をご馳走になったりします。元旦祭は午前8時頃より1時間位、区長主催でとり行われます。ぶくの家の人を除いて字の人たち全員参集し、新しい年の御加護を祈り一同で手じめを行います。当朝、いろいろな人や所から、神前に御酒(50〜60本)やお餅などが上がりますので、式終了後御神酒をいただき、残りは各組に配分します。
○白山神社
 1日午後元旦祭を行いますが、神主さんの都合で時間は一定していません。他の神社と同様、海のもの、山のものを供え、神殿で祈願、神主さんが祝詞をあげます。その後、総代・用番・正副区長の総勢16名で簡単な直会を行います。以前は社務所(公会堂)で行いましたが、冷暖房つきの新しい集会所ができてからは、集会所が会場になりました。

○八幡神社
 元旦午前零時になると参拝者が続々と境内に詰めかけ、昇殿して新春のはらいをしてもらいます。その後、神社役員の接待を受けます。初詣に甘酒の接待を始めたのは、比企郡内では八幡神社が最初といわれており、石橋にはなかなかのアイディアマンがいたのでしょう。元旦祭は新春祈願祭ともいわれ、申し込みの順に「交通安全」や「家内安全」などの祈祷が行われるほか、昔から氏子全戸の戸主の名前を読み上げて、村中の安泰を祈ります。
 各家庭では、三が日は「お炊き上げ」といって、あちこちの神さまと門松に、朝は雑煮(大根・人参・ごぼう・八ツ頭・白菜・小松菜)を、夜はご飯を上げます。
 7日には5日に摘んでおいたナズナ入りのお粥(大根・人参・ごぼう・八ツ頭)を炊いて神さまにあげます。
 この七草粥の後、門松を片づけますが、門松を取った穴に小正月まで松の芯をさしておきました。

○氷川神社
 神社役員は、31日の午後9時から1時・2時までお焚き上げ、神社の戸を開け外に幕を張り初詣を迎える、おまいりの人には誰かれなくお神酒やみかん・甘酒を振舞うなどの仕事があります。昔は幟を立てていましたが、終戦前新しくつくった幟を盗まれ、20年くらい前からは立てていません。
 元旦祭は午後2時から行われます。神主さんに祝詞をあげてもらったあと直会をします。昔は神さまにお供えした海の幸、山の幸を神前から下げて、御神酒の肴にしましたが、今は餅だけを参会者に切り分け、それを持ち帰って家族全員でいただくのだそうです。




 講って何?                         
 こう(講)という言葉を辞書でひいてみますと、
@仏典を講義する会、A仏・菩薩・祖師などの徳を讃嘆する法会、B神仏を祭り、または参詣するために組織する団体。二十三夜講・伊勢講・稲荷講・大師講の類、C一種の金融組合または相互扶助組織。頼母子講・無尽講の類〔広辞苑〕と出ています。
 これから調べていく「講」は、この中のB「神仏を祭り、または参詣するために組織する団体」にあてはまるもので、気のあった数人でつくっている場合や、村人全部が参加している場合など、さまざまな形があるようです。
 講とは一体何でしょうか。まず、そもそもの成り立ちや講の種類を含めて、滑川慶徳寺の前住職 鷲峰先生のお話をご紹介いたしましょう。

 講について
  講とは、信仰を同じくする者の集団をさす場合と経済的な相互扶助を目的とする契約講をさす 場合があるが、経済的な講も宗教的な講を基盤として成立したものが多い。講が宗教的結社とし ての性格を持つときは講社とも称し、その構成員を講中とか講仲間ともいう。これまで講という ものは、奈良・平安時代に仏典を講ずる為の集会の名称であったといわれるが、日本には古くか ら宮座のような強い信仰的な組織があって、それも仏教的な講組織を成立させることに影響を与 えている。
  仏教的な講の一つは有力な寺院を中心に結成されたものであり、講集団の所在地と信仰の中心 地は離れている。もう一つは村のなかとか近接地の村をめぐって、信徒及び信徒でなくても同部 落や近接地に居住するものを要員として組織された講で、日蓮宗の題目講、身延講、浄土真宗の 報恩講、念仏講等がある。
 また、民間信仰的な講で仏教的色彩を強く持つものに、念仏講、観音講、子安講、地蔵講、阿 弥陀講、薬師講(慶徳寺でもやったことあり)、大山講、稲荷講等がある。東松山にも上岡の馬 頭観音講、大山講(神仏混合)、御嶺講、三峰講、榛名講、宝登山講等があり、代表で一年一度 参詣するのを代参講という。

 また、民間信仰としてのいろいろな講について『東松山市史 民俗編』には、次のような説明がなされています。

 いろいろな講
  市内の講集団には地縁的なもの、職業集団的なもの、年齢集団的なものなど構成メンバーに よっていくつかに分類することができる。また、代参講とその他の講にも分けることができる。 市内の各地で共通して行われていた講としては、榛名講、大山講、三峰講、御岳講、伊勢講な どの代参講である。
  中でも榛名講は旧村(大字)単位で行われているところが多い。講員になることはむらの一 員になることであり、氏子の一員にもなることであった。講は個人の信仰心を満足させるとと もに、地域集団の連帯意識を高め、親睦を図ることでもあった。
 鷲峰先生のお話にもありましたが、ここに述べられている代参講とは、信仰する神社などに全員で参詣するのではなく、誰かが代表で行くことをいいます。すぐ近くの神社に行く場合もあれば、遠く伊勢神宮などへ「一生に一度」の大旅行となる場合もありました。唐子にもたくさんの講がありましたが、今ではかなりの講がなくなっています。唐子の講にはどんなものがあり、どのように行われていたのか、まず地区内を歩いて講の足跡を訪ね、実際に講を体験した方からお話をお聞きしました。そして、講が唐子の人々の生活にどのような役目を果していたのか、あるものは消え、あるものはずっと続いているのはなぜかなどをご一緒に考えてみたいと思います。

(続きは本書で)

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